42 アメリカでの通夜、葬式

久しぶりのシカゴだよりですが、今回は悲しいお話。

先日、幼稚園に通う長男のクラスメート、J君のお母さんが、急逝しました。
 36歳という若さ。自宅ではしごを使って家事をしていたところ、頭から落ちて強打してしまったそう。
 この訃報を聞いて、「まさか、彼女が?」という信じられない思いで、頭は真っ白、鳥肌は立つわ、心臓はドキドキしっぱなしでした。
というのも、亡くなる前日は動物園への遠足にも元気に参加していたし、そのあとの幼稚部のバイオリンコンサートにも出席。コンサートのあとは家でJ君の髪を切ってあげていたそうです。
 今思えば、最後に子供たちと一緒にあれこれできてよかったとは思いますが、それにしても早すぎる死でした。彼女が人一倍明るく、学校のボランティアにも積極的に参加していた元気のいい人だったので、余計に信じられない。

今回私が書きたかったのは、彼女の死を通して周りの人たちが取った対応、行動のことです。
 まず、訃報を聞いて、すぐにクラスマザー(クラスの父母代表)が校長先生のところへ行き、クラスメートとしてJ君の家族に何をしてあげられるか話し合ったといいます。翌日にはクラスの父母全員にメールが送られてきて、
 「J君の家族にあなたがしてあげられることはありますか。食事を作ってあげる、放課後一緒に遊ぶ、勉強をみてあげる・・・、なんでも結構です。リストを作りたいと思いますので、できることを教えてください」
 という内容でした。
 私もJ君の家族のことが気になっていたので(明日からのお弁当はどうするのか、家事はどうするのかという現実的な問題)、私にできることを考えてすぐに返信しました。

そしてその翌日には、校長先生から全校生徒に向けて訃報の報告が手紙でなされ、通夜と葬式の案内も書かれていました。クラス内では寄付金も集めました。今後は奨学金のことも考えていくそうです。

J君と小学校3年生のお兄ちゃんは、お母さんの急逝から2日後には登校してきました。そして、その翌日に行われたミニ運動会には、なんとお父さんがボランティアで参加。
 もうなんというか、これは文化の違いなのか、宗教の違いなのか、驚かされることばかりで言葉を失います。

一週間後、私はクラスメートのお母さん数人と通夜に参列しました。
 宗教の違いでしょうが、キリスト教の通夜は日本のそれとは比べものにならないほど明るく、30度ほど起きあがった姿勢でキレイにお化粧をした彼女を前にして、生前の楽しかった思い出を語り合うのです。元気だったときの写真もたくさん飾られています。
 キリスト教の通夜に参列するのが初めてだった私は、この楽しい雰囲気の通夜が逆に悲しくなってしまって涙が止まりませんでした。ショックでしばらく眠れない日が続きました。
 こんな悲しい思いはもうしたくない。だれもがそう思ったことでしょう。

でも、彼女は幸せな人です。私が死んだら、みんなこうやって悲しんでくれるのだろうか、残された家族のために何かしてくれるのだろうか。

彼女の人徳なのか、それとも突然の事故死だったからか、そういう風習だからかはわからないけど、彼女を追悼して多くの人が通夜に参列し、彼女の家族を気にかけてくれるなんて、初めて見る光景でした。正直感動しました。

私もJ君とJ君の家族のために、できるだけの協力をしていきたいと思っています。
 J君のお母さんのご冥福をお祈りします。

(2007年6月)