28. アメリカの結婚式
アメリカにいる間に一度は出席してみたかった結婚式。映画の見過ぎかもしれないけれど、本場の教会式はより神聖な感じがするし、式の後みんなに見守られながら乗り込む、空き缶がたくさんついた白いリムジンはかっこいいし、ダンスパーティなんて、自分なら絶対恥ずかしくて出来ないから憧れてしまう。この夢にまで見た結婚式に、なんと私たち夫婦が招待されたのです。
招待してくれたシャローンは、もともとダンナの英語のボランティア講師。それが4年前の話だから、プライベートなつきあいもずいぶん長くなります。その間、彼女のボーイフレンド、ジムとも何度も食事をしていて、会うたびにナイスカップルだなと思っていたので、結婚の話を聞いて心から喜んだのは言うまでもありません。
ところで、長年の憧れのセレモニーに招待されたのはいいのですが、アメリカの結婚式については何も知らない私たち。一体何を準備したらいいの? 服装は? ご祝儀は? この無知のせいで、彼らにまで恥をかかせたら大ごとです。そんな訳で、事前に友達に色々とアドバイスをしてもらったのですが、これがなかなか興味深い。服装は、日本では男性はブラックスーツに白ネクタイ、女性も最近は黒が多くなっていますが、アメリカでは何でもあり。男性で日本人のような服装をしてくる人はいないし、女性は人それぞれで、ジャラジャラとど派手なパーティスーツで来る人もいれば、ちょっとだけよそ行き風のワンピースという人もいるとか。ご祝儀については、プレゼント派と小切手派に分かれるそう。プレゼント派は、新郎新婦ご指定のデパートなどに出向き、事前に彼らが登録した「ギフト欲しい物リスト」をもとに予算に合わせてプレゼントを買うのが一般的。何だか味気ない気もしますが、選択ミスはないからお互い安心ではあります。そして、もう一方の小切手派は、日本のように現金を包むのではなく小切手を封筒に入れて渡すのです。友達のアドバイスによると、アメリカには引き出物がないからご祝儀もその分差し引いて考えた方がいいとのこと。「私だったら、どんなに仲のいい友達でもせいぜい100ドルまでだなあ」とは彼女の談。
さて当日。私は色々迷った末、黒のノースリーブワンピースを友達から借り、ダンナは日本式スタイルで教会に向かいました。シャローンが式の10分前までに来てくれればいいというので半信半疑でその時間に到着すると、なんと駐車場でジムの両親とばったり。両親が10分前とは変な話ですが、アメリカでは式の前の親族だけの儀式というのはないのだそう。代わりに式の前日に「リハーサル・ディナー」というのがあって、通常新郎の両親が新婦の身内をディナーに招待するそうです。ちなみに、リハーサル・ディナー後の独身最後の夜の過ごし方ですが、同棲していたカップルでもその日は別々の夜を過ごすのがアメリカ式。ジムはアパートで一人寂しく過ごし、一方のシャローンは友達の家で夜通しおしゃべりに夢中だったとか。
若くてリベラルな彼らのことだから、式もカジュアルかと思いきや、1時間めいっぱい伝統的な儀式でした。後で聞いたところによると、ジムの母親と教会の司祭が親しかったためそうするしかなかったようですが、私たちにとってはいい経験です。立ったり座ったり、司教の話を聞いたり、賛美歌を歌ったり、それから映画によく出てくる司祭にクッキー(?)をもらうシーン。全員ではないのでどうやら宗教的な儀式のようですが、ダンナは興味本意で自らもらいに行っていました。カトリックの正餐式だそうです。宗教はさっぱりの私の目にも、厳粛でみんなが緊張して式を進めていたのはわかったのですが、それなのに参列者の服装が思った以上にラフなのには驚き。案の定、日本式のスーツを着た男性は一人もいなかったし、女性はセーターにチノパンとか、どうみても娘のサッカーの練習帰りとしか思えないような親子もいました。「どうか通りすがりの人たちでありますように」。そう思ったのは私だけでしょうか。
トラディショナルな式とは打って変わり、その夜のウェディングパーティはカジュアルなものでした。着席してディナーを食べながらのフォーマルなパーティもあるようですが、彼らが選んだのは立食パーティ。その方が彼ららしい感じがしました。まず入り口に入ると大きな棚があり、そこにプレゼントを置きます。小切手派のために、ポストのような箱も置かれています。私たち夫婦は入場すると、前菜などをつまみながら周りを観察してまわったのですが、アメリカ人らしく知らない人同士でもすぐに打ち解けあい、そこに新郎新婦も混じって冗談を言い合ったりで、和気藹々とした楽しいパーティでした。
パーティは途中からダンスパーティに。まずは新郎新婦が華麗なダンスさばきを披露して(自称ダンシング・マシーン)、お決まりのキス。それに魅せられて後から後からダンスカップルが増えていき、ご老人までもが夫婦仲良く踊っている姿はほほえましいものがありました。さすがに私たちは出来なかったけど・・・。
パーティの締めくくりは、恒例のゲーム。新郎が新婦の膝から取ったガーター(ブレスレットみたいなもの)を手に、後ろ向きになって独身男性に投げ、新婦はブーケをやはり後ろ向きになって独身女性に投げます。それらを拾った者同士が次回のカップルになるかも・・・というゲームです。
日本の結婚式も費用がかかりますが、アメリカのそれも2万ドル(240万円)〜3万ドル(360万円)と相当なもの。通常費用は新婦の両親が出すそうですが、シャローンとジムは1年半貯金をして、全費用を自分たちで払ったとか。独立心旺盛な彼らには脱帽です。
友人たちに見送られ、幸せいっぱいのシャローンとジムは、翌日アラスカへ新婚旅行に飛び立って行きました。末永くお幸せに! そして、貴重な経験をさせてくれてありがとう!。
2003年10月
■写真は上から、□新婚旅行に出発! □幸せいっぱいの新郎新婦と私たち □結婚披露パーティ