29. クラフトショー

キルトやクロスステッチ、トールペイント、ビーズアクセサリー、ミシンを使った小物作りなどなど、クラフトが趣味の人って結構多いですよね。私もその一人なのですが、そういう人にとって、アメリカはまさに天国。布生地や、クラフトの材料ショップが街のいたるところにあって、規模も大きくその上安いのです。たまに見る日本のクラフト雑誌に「アメリカ直輸入の生地」などと載っていますが、こちらではそれと同じ物が半額以下で手に入る訳ですから(当たり前?)、クラフト好きにはたまりません。

手作りグッズを売っている店も、それはもういっぱい。それなりの値段がするというのに、「cute!」などと興奮しながら買っていくご婦人方が、まあなんと多いことか。アメリカ人は、クラフトをするのも作品を買うのも大好きなようです。特に、冬の寒さが厳しいシカゴでは、冬と言えばクラフトかボーリングかというくらいで、そういうことに全く興味がなかった駐在員の友達も、日本に帰る頃にはエキスパートになっているから笑えます。

人気のクラフトにもシーズンがあって、それは10月からクリスマスにかけて、毎週末必ずどこかで「クラフトショー」が行われています。作品の展示会の場合もありますが、その多くは、各ブースごとに分かれてプロが作品を売る、合同ショップのようなスタイル。私も毎年見に行くのですが、密かに興味のあった売り手側というのを、昨年秋のあるクラフトショーで体験しました。

そのクラフトショーは市が主催で、市のコミュニティセンターで行われました。ホテルなどで行われる大がかりなクラフトショーともなると、ショップの参加費だけでも数百ドルもするのですが、今回は1ブース25ドル。しかも友達4人で合同でしたから、手始めにはうってつけです。でも、そうは言っても、売買をする以上半端なことはできません。どんな物が売れるか、サイズや柄は?値段設定は?チラシも作って宣伝しなくっちゃ・・・。みんな商売は初めての体験で、やる気満々で何度も話し合いました。ある友達はビーズアクセサリー、別の友達はクリスマスリースやキルトのマグネット、針山付きのバスケット。私は布のお菓子入れとお箸入れ、一輪挿しを売ることにしました。出店を決めてからショーまでの期間はたったの2ヶ月。その間できるだけたくさん作ろうと、暇さえあればミシンと向き合っていた毎日。結局、私一人だけでも150個は作ったでしょうか。ミシンをしながら、「すぐ完売して午前中で店じまいになったらどうする?」なんて自信たっぷりの日もあれば、「全然売れなかったら、残りはどうしようか」と、不安で夢にまで出てきてしまう時もありました。

で、結果は?それが、もう笑ってしまうくらい売れなくって。ショーの前にフライングで友達が買ってくれた方が多かったくらい(笑)。ショーの当日も、買ってくれたのは人づてに聞いて来てくれた日本人ばかり。後で売れなかった理由を考えましたが、アメリカ人はもっと派手なアメリカンカントリー柄が好きで、値段にもシビアだったのかもしれません。それより何より在庫の処分はどうしよう。そう心配していたら、後日意外にも友達の紹介の輪が広がり、あっという間に残りわずかに。だったら最初から口コミ販売しておけば良かったのかな。やはり日本人の好みは日本人が一番わかっているということでしょうか。

何はともあれ、貴重な体験のできたクラフトショー。売れなかったこともまたいい思い出です。この反省をもとに、今度は家で一日ショップを開く「オープンハウス」でもしようかと、作戦を練っている最中。主婦業の合間に、たまにはこういう刺激もいいものですね。さて、今日もこれからミシンをしようかな。

2004年4月

■写真は2003年9月クラフトバザーにて