3. サンクスギビングディ

10月のハロウィーンのキャンディ配りが不発に終わってしまい(アパートのエントランスがオートロックだから人が入ってこられない)、アメリカらしいことした〜い! と飢えてたところに、友達のジョアンからサンクスギビングディのお誘いがきました。

サンクスギビングディは毎年11月の第四木曜日で、今年は25日。日本のお盆やお正月のように家族が集まって、食べ物を与えてくれた神様に感謝をする日です。家族の集まりに誘ってくれるってすごいことじゃない? とかなり興奮状態の私。誘われたからにはサンクスギビングディの意味くらいは知っておかねば! と急にあせって調べてみると、実は涙ものの歴史があったんですね。昔アメリカに渡ってきたイギリス人たちがインディアンに助けられて飢えをしのいだ。そのお礼にとインディアンを招いた収穫祭のごちそうが、ターキー(七面鳥)とカボチャだった…ということで、サンクスギビングディにはターキーとパンプキンパイを作るのが伝統になってるようです。
 そんなわけで、今年も11月に入った頃からスーパーには所狭しとターキーが置かれ、ごちそうを作るためにみんな山のように食材を買います。アメリカのスーパーのカートって日本より二周りくらい大きいのに、それにも入らないくらいのものすごい量。見てるだけでお腹がいっぱいになりそうです。そしてそういう人に限って太ってる、というより巨体。「今回ばかりは無礼講」って感じでうれしそうに買い物してる巨体おばさんのせいで、いつもは広々の通路もなんだか窮屈でした。

さて待ちに待った当日。手作りの料理を持ち寄るということだったので、私は生クリームの中にエビを入れて固めたアパタイザーとチーズケーキ、ジョアンのダンナさん、リアンのリクエストでディーンズのフローズンヨーグルトを持っていくことにしました。約束の2時にジョアン宅に着くと私達夫婦が一番乗り。ジョアンは朝8時から焼き始めたという特大のターキー(20ポンド、9キロ)の焼き具合を、リアンはワインの用意をしていました。う〜んいい香り! ワクワクしながら私もマッシュルームを切る手伝いをしているとまもなく、そこへ親戚の一団、ジョアンの兄夫婦とその子供2人、奥さんの妹さんとその両親も到着。お互いを紹介しあったり(ちょっと恥ずかしいのですが、私はK.D.、ダンナはJ.D.というのがアメリカでのニックネーム。ジョアン夫婦に付けてもらいました)、作ってきた料理を並べたり、料理の手伝いをしたりと、ワイワイガヤガヤ急にパーティらしくなってきました。今回改めて思ったんですが、アメリカでは男性も子供も料理の手伝いをするのが当たり前なんですね。「ハニー! 僕がマッシュポテト作るよ」なんて言葉が飛び交ってる(当然チュッ! も)。映画の世界だけじゃなかったんだと、妙に感動です。

そんなこんなで30分。野菜とパンがぎっしり詰まった特大ターキーは、ナイフで小さく切られそれぞれのお皿に。サラダやポテト、コーン、ハムなどのアメリカ料理も並び、ついにパーティが始まりました。「サンクスギビングだけに、お祈りの儀式でもあるのかな?」などと実はちょっと緊張気味の私達でしたが、ここでのパーティにはそういったものなく、乾杯のあとすぐに食事が始まりました。これも今回改めて感じたのですが、こちらの人は料理を食べるたびに、ワンダフル! とかグレート! とか目を見開いて誉めるんです。まるで「こんなおいしい料理食べたことない」っていうくらいに。私も最近は慣れてきたけど、コーンのバター炒めにそこまで誉めるなんて、歯が浮きそうでなかなかできません。だから、喜怒哀楽がないって言われるんですよね。

ところで食事中の会話ですが、気さくな親戚のおかげでとても楽しいものになりました。会話といっても、近況報告や学校のこと、友達のこと、健康のことなど、家族のだんらんにつきものの普通の会話でしたが、これが私達にはたまらなくうれしく感じられました。なんだか家族の一員になったような、そんな気分でした。その中で最近の話題としてエジプト機墜落のことがあげられ、「自殺か? 操縦ミスか?」という話から、「死後の世界を信じるか?」という話に、しいては宗教の話にまで発展した一幕がありました。日本では、一応仏教だけどあまり関心がないという人が多いですよね。私もその一人で、聞かれても何を答えていいのやらという感じでした。これからもきっと、こういう場面に出くわすでしょう。関心がなくても勉強くらいはしておかなくてはと、ちょっと反省。

さて、メインの食事を楽しんだ後は、デザートタイムが始まりました。私が作ってきたチーズケーキのほかにアップルパイとショコラケーキ、アイスクリームの特大パックが3つも並びました。私達はすでにお腹がはちきれんばかり。でも手作りだから食べないわけにはいかないと、ほとんど無理やり食べました。そしたらはんぱじゃなく甘い! おいしいんだけど、1口食べただけでギブアップでした。みんなはというと、またまた絶賛しながら2切れも3切れも食べているから驚きです。しかも私のチーズケーキに関しては、甘さが足りなかったようで上に生クリームをたっぷり載せて食べていました。いつもより甘く作ったのにそれでも薄かったのか! やっぱりアメリカ人の胃袋は違う。だから太るんだよ〜と心の中で叫ばずにはいられませんでした。

そうこうしているうちに、時計は7時を指していました。もうおいとまの時間です。みんな寂しそうな声と顔をして(これも礼儀かもしれませんが、やっぱりうれしい)、別れ際にお別れのキスをしてジョアン宅を後にしました。残りのみんなは、家族のだんらんの続きをするようでした。
 私達は、自宅に戻るとパーティの反省会みたいなものをしながら、さっそくサンクスカードを書きました。こちらではパーティやプレゼントをもらったら、すぐにお礼のカードを送るのが礼儀のようです。楽しく、そして驚きの連続のパーティは、私達にとって大きな収穫でした。この勢いでクリスマスやハロウィーンパーティ、それから結婚式にも参加できればと思っているのですが、その前にもっと友達を作らなければいけませんね。今後に乞うご期待というところでしょうか。

1999年12月

●写真は(上)ジョアンとめいっこのジェニファーちゃん。(下)サンクスギビングディの食事