11. 駐在員村も危険地帯?

ここ数ヶ月、日本人駐在員を震撼させる事件が起こっています。率直にいうと、アジア人女性を狙ったレイプ事件です。犯人は、30歳前後の黒人男性。シカゴ北西部、つまり日本人駐在員が多く住んでるエリアのアパートを中心に、昼間警察や郵便配達人の振りをして押し入り、強姦するというのが手口のようです。

この数ヶ月の間に10回ほど同じ事件が起きているのですが、犯人は未だにつかまっておらず、警察は犯人逮捕に1万5000$の懸賞金をかけています。うちのアパートは特に日本人が多いということもあって、大家さんも心配の様子。わざわざ日本語で警告のチラシを配ってくれたり、警察を招いて犯罪防止のセミナーを開く配慮ぶり。が、当の私は昼間ほとんど家にいないこともあって、それほど気にも留めていませんでした。少なくても昨日までは。

昨日たまたまミツワ(旧ヤオハン)に買い物に行ったんです。そしたらチャンネル5と7のクルーがミツワを取材していたので、「食中毒でもあったのかしらん」と首を傾げていたら、駐車場でレポーターに声をかけられました。「この人知ってる?」彼が見せてきたのは、例の犯人の似顔絵写真。「知ってるけど、何かあったの?」と私が尋ねると、昨日この近くのアパートで日本人女性がレイプされたとのこと。ということは、うちの近くってこと?

詳しく聞いてみると、うちのアパートではなかったのですが、仲良くしてる友達のアパートでした。早速友達に電話してみると、どうも犯人は買い物帰りのその女性をつけていたらしい。それを聞いてからです、私がぞっとしたのは。「お互い気をつけようね」そういって電話を切ったのですが、考えてみると気をつけようにも犯人に関する情報が少なすぎます。背格好と手口はわかっても、写真があるわけではないし、車か歩きか、車だったら車種は? どんなアジア人を狙っているのか? 肝心なとこがさっぱりです。

で、これはある意味お約束ですが、ある人は「犯人は昔韓国人とつきあっていて振られたから、その仕返しに韓国人女性を狙ってる」と言うし、一方で「日本人はお金をもってるから日本人女性を狙ってる」と言う。発信先不明のうわさがその辺で飛び交っています。周囲を見渡したら、それらしい人なんていくらでも。はっきりいって、みんな情報に踊らされています。このまま、おびえ続けて生活していかなくちゃいけないのかなぁ。そんなことを考えると、せっかくの夏なのに憂鬱です。

※この記事を書いた後、新情報がわかりました。例の事件の被害者は、レイプされたのではなく、逃げまわったすえ鈍器で殴られ病院に運ばれたそうです。命に別状はないということなので、まだ傷が浅くすみそうだと、正直ほっとしています。この狭い世の中、もし最悪の状態になっていたら、きっと彼女はシカゴにいられなくなっていたでしょう。うわさが日常会話の世界ですから。彼女は車の車種も覚えていて、緑色の新車のアメ車ということもわかりました。それから、今回の事件をきっかけに懸賞金が3万$に跳ね上がったそうです。本当にうわさって恐いですね。

2000年7月