やっぱりパーカーはおもしろい
『愛と名誉のために』『過ぎ去りし日々』その他
ロバート・B・パーカー、今さら説明するまでもない、ハードボイルドの大家である。ボストンの探偵スペンサー・シリーズ、女性探偵サニー・ランドル・シリーズ、パラダイス署長ジェッシィ・ストーン・シリーズなど、全く読んだことがない人の方が珍しいくらいではないかと思う。だが、シリーズものなら取りあげられることも多いが、スタンドアローンはその存在すらさほど知られていないのではないだろうか。今回は、パーカーの意外な魅力に出会えるスタンドアローンをご紹介しよう。
まずは『愛と名誉のために』。作家志望の青年の恋と挫折、再生を描いた作品である。愛する女への思いに生きる男の美学と若者の成長が描かれており、スペンサー・シリーズの原点といえる。朝鮮戦争からベトナム戦争にかけての若者の風俗がうかがえるのも、楽しみのひとつだ。いささか気恥ずかしいタイトルだが、毛嫌いせずにぜひご一読をお願いしたい。
次は『過ぎ去りし日々』。こちらはアイルランド移民の3代にわたる愛と裏切りの物語である。愛した女性に裏切られ、アメリカに渡って警官となったコン、父のあとを継いで警官になり、闇の世界に関わる息子ガス、学究を目指しながらも政治に翻弄される孫クリス、そして彼らと関わる女性たちの姿が力強い筆致で描かれている。すぐれた警察小説であり、ストーリーテラーとしての実力を感じさせる野心作である。パーカーのアイルランドへの思いが伝わってくる。
この9月にジェッシィ・ストーン・シリーズの新刊『容赦なき牙』が出され、10月にはウェスタンもの『アパルーサの決闘』の続編『レゾリューションの対決』の刊行が予定されている。そして9月25日にはパーカーのすべてを網羅した『ロバート・B・パーカー読本』が刊行される予定である。この秋、パーカーをたっぷりお楽しみいただきたい。
ボストンの探偵スペンサー・シリーズ、女性探偵サニー・ランドル・シリーズ、パラダイス署長ジェッシィ・ストーン・シリーズのほか、ノンシリーズの作品(『愛と名誉のために』『過ぎ去りし日々』その他)も早川書房から発行されている。