VIC FAN CLUB
VIC FAN CLUB: ESSAY
←ともこの読書日記

ともこの読書日記7


お引っ越し

嶽山 智子
Tomoko Dakeyama

 ああ、やっと片づいた。何が片づいたのかというと、母に嫌みを言われながらも、のらりくらりとかわしていた引っ越しの片づけが、である。もちろんすっきりと片づいたわけではなく、今まで見ないふりをしていた段ボール箱がクローゼットの中に何とか押しこめられたというちょっと見だけの片づきかたなのだが…。やかまし屋の友人一家が急に訪ねて来るというので、ちょっといいかっこしたくてD氏と2人バタバタと動き回った結果なのだ。両親のいつにない働きぶりに、おしゃまな凜はチリトリと手ボウキを持って何やら掃き清めてくれている。兄の遊は難しい顔をしてマンガとにらめっこ、夢の世界にはばたいているのだ。「やっぱり片づいた部屋は気持ちいいわ」、と当たり前のことをつぶやきつつ、このこざっぱりがいつまで続くかとちょっと不安な私。押し込んだ段ボールが飛び出してくる日はそう遠くない(断言してる)。

 思い起こせば3月中旬、初めてのお引っ越しに向けて活動をはじめたものの、そこはそれ、モノを捨てないD氏の40年間の積み重ねプラス、同じく捨て下手・片づけ下手の私と結婚してから10年間の宝の山。出てくるわ出てくるわで気が遠くなった事もありましたが…。引っ越しの前夜は2人で完全徹夜「新しい家ではシンプルに暮らそうな」と誓い合ったのでした。引っ越しが済んでからも片づかない段ボール箱を見て見ぬふり、「片づいたら来てね」のことばも、「遊びに来るときは軍手もって来て」に変わり、段ボール箱をひっくり返しては捜し物をするのが終わる日が来るのだろうか? と何やら怪しい胸騒ぎがするのでした。ま、それは今も変わらないわけですが。

 春休み中の引っ越しからこの方ゆっくり本が読めるのは昼休みのひとときのみ。お弁当を食べつつ読んでいたのが『女検死官ジェシカ・コラン』。FBIの新人女性検死官という設定で、あのスカーペッタほどの貫禄はなく、でも勘は鋭く、連続殺人犯の吸血鬼を追いつめていく。妻子持ちの上官と惹かれあっていたりして、ストーリーの印象としては『羊達の沈黙』を思い出させる設定でした。頭の中でジョディー・フォスターやアンソニー・ホプキンスが動き出して困りモノでしたが…。
 とにかく血、血、血…。自分でもご飯を食べながらよう読むなあと思いつつ読んでいました。

 最近気になるのは流行りみたいで照れますが、ガーデニング。とにかく私の手は「緑の手」とは程遠く、いわば「茶色の手」なのだ。手をかけすぎては枯らし、暑くては枯らし、寒くては凍らし、と様々な失敗を重ねている。ああ、あこがれの緑のある生活。今はお隣の「緑の手」を持つ奥さんの作品を愛でさせてもらっている。こんな私にはキンジーが一緒に暮らしていたエア・プランツあたりがお似合いなのかも知れない。

1998年6月

VIC FAN CLUB  連絡先:kumi@sgy2.com