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War(DELUXE EDITION)

わたしの大好きな本とCD 11

U2「WAR」

谷澤美恵

 U2といえば今や大御所。ロックに詳しくない人でもその名を知っている人は多いと思う。アイルランド出身で、結成は1978年。世界的なロックバンドであり、リリースされたアルバムはいずれも高い評価を受けている。
 この「WAR」は3枚目のアルバム。リリースは1983年。今では円熟期にある、という表現がぴったりなくらいの貫禄をたたえたU2だけれど、17年前に発表されたこのアルバムの彼らは当然の事ながら若い。荒削りで情熱的。抑えきれない怒りや情熱がほとばしり出るような、熱ーいアルバムだ。
 タイトル「WAR」が表すとおり、様々な「戦い」がテーマになっている。紛争や核などの重い問題を取り上げているが、個人的な感情や視点で歌われているので押し付けがましいところはまったくない。

 北アイルランドの「血の日曜日」事件を歌った「SUNDAY BLOODY SUNDAY」のイントロのドラム。何度聴いても、聴くたびに心が騒ぐ。叩きつけるようなこの力強いラリーのドラムの音は、スタジオの裏にある階段の下で録音されたんだとか。4曲目の「LIKE A SONG」もドラムが非常に印象的。ハンマーを思いきり叩きつけるような強いドラムの音で始まる。
 U2を語る時、その魅力の一つにヴォーカルのボノの声がよく上げられる。全身から絞り出すような彼の歌い方は感動的であり、心を揺さぶられずにはいられない。あふれ出る感情を思いきりぶつけ、時には泣き叫んでいるようにも聞こえる。「いったいこの人たちは何を訴えかけているんだろう?」…それが知りたくてどんどんU2にのめり込んでいった、そんな人がたくさんいる。
 とはいえ、現在のU2は、当然の事ながらここにとどまってはいない。このアルバムに限らず、過去の作品と似たものは二度と作らないし作る気もない、というのが彼らの一貫した考え方だ。この後どんどん変化していくことになるのだけれど、今でも根本のところはなんにも変わっちゃいない。彼らの心底にはロック・スピリットがしっかりと根付いているのだから。

2000年2月

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