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Automatic for the People

わたしの大好きな本とCD 10

R.E.M.「AUTOMATIC FOR THE PEOPLE」

谷澤美恵

 誰にでもお気に入りのアーティストっていると思うけど、R.E.M.は私のいちばんのお気に入りであり、大切なバンドです。こう思っている人はきっと世界中にワンサといることでしょう。彼らは1980年にジョージア州アセンズにて結成。現在のメンバーはピーター・バック(G)、マイク・ミルズ(B)、マイケル・スタイプ(Vo)の3人。R.E.M.は「アール・イー・エム」と読みます。バンド名の由来はRapid Eye Movement(睡眠時の眼球運動。レム睡眠、ノンレム睡眠という言葉をお聞きになったことがあると思います)ですが、現在ではほとんど意味をなさず、ただの記号と化しているようです。彼らはローリング・ストーンズ誌で“America's Best Rock & Roll Band”、“The Most Important Rock Band In The World”(世界で最も重要なロックバンド)と紹介され、世界中から尊敬を集め、支持され続けているけっこうすごいバンド、なんですが、ここ日本ではなぜかイマイチ知られてません。ああ、なんてもったいない…。

 このアルバム「AUTOMATIC FOR THE PEOPLE」は92年発表の作品。世界中で大量に売れまくったこのアルバムは彼らの最高傑作だといわれており、「いちばん好きなアルバム」と言うファンも多いようです。「アメリカ一のロックンロールバンド」が作ったこのアルバムは、しかしロックとは程遠い印象で、ヴァイオリンやチェロなどのオーケストラル・アレンジが多用され、重厚な響きの曲が多くなっています。(ちなみにこのアレンジは元レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズが担当。)
 アルバム全体を通して流れているのは「死」のイメージ。あまり明るい内容じゃないです。はっきり言ってクライ。4曲目の「EVERYBODY HURTS」は、歌詞カードの対訳(聞き取りによる記載)からは「辛いことも多いけどがんばろう」という応援ソングのような軽めの印象を受けかねないけど、これは自殺しようとする人に対してストレートに「死ぬな」と訴えかけた曲だし、ラストの「FIND THE RIVER」も死に赴く川、つまり三途の川を歌った曲だといわれています。こんなふうに書くと「えー、クライ。そんなん聴きたくないわ」と思われるかもしれませんが、どの曲もメロディが非常に美しく、繰り返し聴くほどに心に響いてきます。不思議な雰囲気が漂う9曲目の「STAR ME KITTEN」からラストにかけてはただただ美しい…。
 「誰もがR.E.M.をジャランジャランとギターをかき鳴らすバンドだとみなす傾向がある。でも、実のところ、僕らはソングライターなんだ」と、ピーター・バック(当時}。彼らは「こんなのR.E.M.じゃない」などと言われることをヘとも思っていません。枠にはめられることを拒み、ジャンルに囚われることなく自分たちがいいと思った音楽をやり続ける…そういう姿勢がファンを惹き付ける強い要素になっているんじゃないか、と思います。

1999年12月

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