わたしの大好きな本とCD 6
谷澤美恵
じめじめした梅雨が明けると、またうだるような夏がやってくる…。そう、暑い夏になるとこのアルバムが聴きたくなる。もう、どーしても聴きたくなる。汗ばんだ肌に心地よく吹いてくる涼風のような、グラスの中で氷がカラン、と鳴る音のような…そんな軽やかな音楽。ゴンザレス三上氏とチチ松村氏によるギターデュオ、ゴンチチのベストアルバム、その名も「ヴァカンス」。
じゃあ夏にしか合わない、季節限定盤みたいなのかというと、そんなことは全然ありません。夏になると聴きたくなる、というのは私の勝手な思いこみ。条件反射のようなものなのです。人によっては春でも冬でも、もちろん秋でも…。CDジャケットの中に書かれている「ANYTIME&ANYWHERE」という言葉通り、いつでもどこでもこれさえ聴けば心はヴァカンス、どこかへひとっ飛び。それは木々茂る緑の中だったり、海の近くだったり、あるいは子供のころに遊んだ川のほとりだったり…。
一曲目、「風の王国」のイントロ。なんて軽やか。なんて涼やか。なにものにもとらわれず、気の向くまま思いのままに吹く風のように、凝り固まっていた心も解きほぐされ、開放されていく…。ラストの「Waltzin Blue」までその軽やかさは続きます、実にさりげなく。自然の中で聴く鳥のさえずりや風の音に、このアルバムの心地良さは負けてません。
CDジャケットはトリコロールのチェック柄、中のCDは赤と白のギンガムチェック。かわいい。思わず笑顔になります。至れり尽せりです。
1999年7月