下岡 加代子
横浜市のかながわ県民センターで行われた「2000AIDS文化フォーラム」、すごくバラエティに富んだプログラムで、それぞれ面白かったですよ〜！ ここまで多様な視点からHIV／AIDSを捉えて考えることができるんだな、と改めて驚きました。各プログラムを運営するのは民間グループで、それぞれが熱意をもって普段の活動に取り組み、それが反映された内容でした。仕事の都合で2・3日目しか参加できませんでしたが、ちょっとレポートしたいと思います。
『これでいいのか保健所？！』では、保健所が地域の人々にHIV／AIDSが各個人と関係があるものだとアピールする方法をディスカッションしました。最近は献血でHIV感染が判明する人が多く、逆に保健所の抗体検査を受ける人が減少している理由として、やはり一人一人がまだまだHIVは自分とは関係がないと思っているからだろう。近い将来、病院でも無料の抗体検査を始めるらしいと言われており、ただでさえ予算削減されつつある保健所の存在意義が厳しく問われてくるのではないか。「病院は検査でもカルテを作られるけど、保健所は匿名で検査を受けられる」という利点をテコに、保健所職員は学校などへの講演をガンガン行うなどしてアピールしていこう。といった内容でした。プログラム運営者は東北地方の保健婦でしたが、「保健婦さん」というイメージからは百万光年離れた超イケてる姐さんで、彼女みたいな保健婦がたくさんいたら中高生も気楽に相談できるだろうな〜、と、その存在自体に感心。
『HIV感染者不当解雇訴訟』については、去る6月に2件の訴訟の原告勝訴と起訴が続いたのでご記憶の方も多いでしょう。どちらも本人に無断で検査を行い、感染を理由に解雇／採用拒否した事件です。勝訴した事件の原告は日系ブラジル人男性で、被告は瀧川化学工業株式会社と市川東病院。外国人従業員にのみ検査を無断で行っていたという、念入りに悪質に差別的な会社なんだとか。勝訴したけれども、日本ではこういった差別に対する慰謝料額が異常に低い（諸々合計で1千万足らず！）ため、とても制裁になるとはいえないのが現状。国として本気で差別撤廃に取り組んでいないことがよく解ります。
今回のプログラムの中心は「警視庁採用取消事件」で、原告と弁護士が発題者として来られました。2年前、警視庁にほぼ採用が確定していた男性（原告）に対して警視庁が無断で検査を行い、「免疫が下がるから」を理由に採用辞退を促し、男性は従わざるをえませんでした（その後の駒込病院での診断は「通常の勤務に差し支えない状態」）。男性は2年間悩んだ末、6月に東京都を相手に提訴に踏み切りました。男性の「いったいどういう理由で検査を行なったのか、それを明らかにしてほしい」という言葉に深く共感。東京都はこの10年、かなり熱心にHIV差別問題に取り組んでいるはず。その努力はこの事件で全て無に帰すといっても過言ではないと思います。8月24日（木）午後3時30分に東京地方裁判所710号法廷で行なわれますので、ぜひ東京都の言い分（言い訳やね）を聞いてやろうではありませんか。
HIV／AIDSとは直接関係ないこともイベントのプログラムに組まれるのが、HIVのいいところ。『イラン人S君の人生 セクシュアル・マイノリティと難民認定』では、職務質問を受けて突然逮捕され、“オーバーステイ”のため東京入国管理局に収容されているSさんの在留特別許可を求めている友人グループが経過など話されました。イランは同性愛者を処刑する法律があるため、本国に強制送還されると死刑に処される可能性が大きいのです。在留特別許可は今まで婚姻を理由に得られるケースがありましたが、このような理由での申請は初めてではないかとのこと。友人の皆さんはSさんがいかに積極的にポジティヴにレズビアン／ゲイの人権活動に取り組んでいたか、そしてイラン・日本両政府に対するマイノリティ弾圧への抗議を、断固と、しかし軽やかな口調で話されていました。
とまあ、参加した中からいくつかご紹介しました。私は初めて参加しましたが、えらく居心地がいいなっ、という感じですね。誰もが堂々とできる場所だからでしょうか。ぜひ皆さんも来年のフォーラムを覗いてみてほしいと思います。
ところで！！ 横浜旅行とはいっても観光なんて全然できないスケジュールでしたから、なんか一点豪華にしようと思い、生まれて初めて、ホテルのモーニングをルーム・サービスで食べましたっっ！！！ もう、ものすごい感動……。パジャマのままベッドに座ってポーチド・エッグをつつく。おお……ゴージャス！！
でも、貧乏性なので、ジャムや砂糖のパック、歯ブラシやシャンプーやバスソルトを「もったいないから」と使わずに置いてきてしまった。アホやなあ……。
2000年8月
