野生の食事 2
前田敦子
今回は「いのししの食べ方」というより、「私は、こうして食べていた」というのをお話ししたい。野趣好みの方だけお読み下さい。
猪狩りはひとりでしとめるのではなく、5人〜10人くらいのグループで行動します。猪の足跡、ねぐらの跡、ふんなどから居場所を特定し、そのまわりを囲むように、人員を配置し、勢子が犬をつれ、追い出して、誰かの前に飛び出したのをしとめるというわけです。
いのししはその場で、血抜き(臭いが肉につくのを防ぐ)し、コップにその血を入れ「山の神様にいっぱい」とかなんとか言ってまくそうです。好きな人はその血を飲む人もいるとか…。
何日も何日も、あちら、こちらの山のまわって1シーズンに2・3頭、みんなでとるのが普通です。
それから、誰かの家に持ち帰り、解体。皮や内蔵は今後の猪への闘争心を養うために犬達に与えられます。鼻や一部の臓物はなにかの漢方薬だそうです。肉は公平に分配され、犬も一人前を持ち帰ります。
残りの骨はスープのように煮込み、飲んだり、しゃぶったり。せせり肉は(良い肉のスライスも)一度味噌で炒め、それをすきやきのように、醤油と砂糖で煮てメンバーみんなで食べます。店のぼたん鍋は味噌風味だけですが、山の天然物は年寄りもあれば、若いのもあり、牡・雌います。においがあったり、固かったり、やわらかかったり。結論を言えば、黒豚や牛など家畜のほうがはずれなくおいしいかもしれません。キーワードは味噌でにおいを消すということでしょうか。
もしよかったら、次回は川じゃこ(大阪では「はや」)の食べ方はどうでしょうか。
毎日裏の田圃にベランダからパンをまいています。同じ時間にむくどり、すずめ、はとなどが待っています。可愛いものです。けっして「ヘンデルとグレーテル」の魔法使いのおばあさんではありませんョ。太らせて食べるつもりはありません。
人の心にはいろいろ相反するものがあるんだなあ。かわいがる心、かわいそうと思う心、食べてみようと思う心、などなど。
1997年3月