Chissarossa の I LOVE CINEMA 27
記憶の限り、モーリス・ルブランの”アルセーヌ・ルパン”が、こんな風に大々的な映画になったのは、初めてだと思うの・・・・・・・・なんで?!?世界で一番有名な泥棒で、おそらく、世界的という意味では、泥棒が英雄として扱われた初の主人公あろうに、ルパンならこの俳優!ってこともなく、007のようにシリーズになることもなく、ZOROのように、何度も時のスター俳優によって映画化される訳でもなく・・・・・・う〜ん、考えてみりゃ、実に実に不思議なことです。なんじゃかんじゃと確かに、映画化はされてますが、少なくとも日本では、アニメの「ルパン三世」の方が有名なくらいではないかと思います。
多分、ルブランの作り上げたルパンという人物は、あまりにも優雅で気品があって、ダンディーでお洒落で、スマートで永遠に青年として有名すぎて、どんな俳優さんを持ってきても、非難囂々、文句たらたら・・・・で、プロジェクトが進まないのかもしれれません。多くの少年少女が、初めて触れる世界的冒険活劇の主役で、ロマンを知るきっかけになる人物だから、作り手だって凝りたくなりますものねえ・・・うんうん(独り納得?)。
物語はあまりに有名ですが、大体が、「カリオストロ伯爵婦人」をベースに、「奇岩城」、「女王の首飾り」、「ルパンの告白」、等など、メジャーな物語すべてが、あちこちにちりばめられているストーリーになっています。その他、例えば銀行家が登場すると、その名前がカッセルバッハ氏で、金庫の鍵ナンバーが”813”だったりして、ルパンファンには、たまらない謎掛けサービスがされていたりしてます。
時は1882年。アルセーヌ・ルパン(ロマン・デュリス)は、格闘家で犯罪者テオフラスト(ニッキー・ノード)と貴族の娘アンリエット(マリー・ビュネル)の間に生まれた。幼き日の父の教えを胸に、母を助け、泥棒家業に勤しんでいる。母の姉の娘にあたり、幼き日々を一緒に過ごしたドルー・スビーズ公爵の娘、従姉妹のクラリス(エヴァ・グリーン)は、そんなルパンのよき理解者で、恋人だ。母の最期を看取ってくれ、父親のトレーナーとしての職まで用意してくれたりする。
しかし、才気あふれるルパンは、たぎる熱い血を押さえきれない・・・ある日出会ったカリオストロ伯爵夫人(クリスティン・スコット=トーマス)の妖しい魅力に、好奇心がかき立てられて仕方がないのだ。カリオストロ伯爵夫人が狙うのは、”マリー・アントワネットの首飾り”・・・彼女は冷酷、超やり手の盗人。ブルボン王朝の復活への企みや、ルパンの父親の死にまつわる陰謀や、お話は複雑に絡み合い、クラリスとの愛の行方は?・・・・と、古典劇なのにとってもスリリング!
ルパンと言えば、その風景は古い城館にノルマンディーの田園風景。片や時代がベル・エポック(19世紀末から20世紀初頭)と、文化芸術盛りの極みで、産業革命で、新しいものがどんどんばんばん登場する時代。これが今回、この映画では、またよく出来ているの!ひょっとしてストーリーより何より、この映像美!!衣装に宝石にオペラ座や汽船や車なんかの舞台装置・・・ものすごく手間ひまかかってますねぇえ!?本物やないの〜〜〜きゃ〜素敵!でございます。これだけでも見物です、この映画!特に宝石は美術館並みで、カルティエの本物が女優さんたちをピカピカに光らせてくれています。そして・・・、その宝石をするりと長い指が触れて・・・・ルパンの魔法がきらびやかに展開されるのを見るだけでも、ハイ、もう十分うっとりでございます。
2005年10月