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Chissarossa の I LOVE CINEMA 21

『コラテラル』〜悪役が主役になる日〜

 映画の宣伝とそのレヴュ−からして、あまり観る気にもなれなかったんだけど、時間の都合でうっかり「コラテラル」を観るはめに・・・・ええ〜〜っ、こりゃ予想外!!イイじゃん〜〜〜

 「コラテラル」=巻ぞえ(ここでは・・・という意味なんだそうです)。映画の宣伝では、とにかく、トム・クルーズが悪者をやる事こそがセンセーショナル!のみ、ガンガン放映されていましたが、なんのなんの、ジャズを始め。音楽に興味ある人にも、聞き応えあるし・・・、世界の仕組みのとらえ方が哲学的押し問答になるのも、なんとも興味深いし・・・、映像は極めてアダルトで、スマートで、オシャレだし・・・、サスペンスドラマなのに、トム・クルーズとジェイミ−・フォックスのやりとりに、クスッと笑えたり、ドラマの進行と共に、私達の日常にもそれが置き換えられ、その台詞の一つ一つが示唆的であったり、勇気づけられたり・・・、とても芳醇な、ビターチョコ映画だと思うの!

 監督はマイケル・マン。「ラスト・オブ・モヒカン」「アリ」「ヒート」「インサイダー」なんて作品を世に送りだしてるが、一番彼を有名にしたのは、テレビ番組の企画自体を大きく革新した「マイアミ・バイス」・・・ん、こうやってみると、得意とするは、アクションものだけど社会派。
 音楽は、ジェームズ・ニュートン・ハワード。この人も、アカデミー賞なんかでは、もはや常連さま。「シックス・センス」「ヴィレッジ」「プリティ・ウーマン」TVシリーズ「ER」「オーシャン・オブ・ファイヤー」などなど。今回の「コラテラル」でも、『グルーヴ・アマルダ』は使うわ、『オーディオスレイヴ』を使うわ、『マイルス・デイビス』に至っては、このストーリーのキイ・ポイントにさえしてしまって、まっこと、マイケル・マンのダークかつ、都会的クールな映像には、この人のセンスはピタリ。無くてはならぬ音楽にというより、こういうのを、音楽と映像は”一心同体”って言うんだ〜〜〜
 それから、お初にお目見えします状態は、オーストラリア出身、スチュアート・ビーティーの脚本。今回、この「コラテラル」の何がイイって、この脚本が気に入ったんです!映画雑誌「プレミア」なんかじゃ、かなりズタボロにこの脚本を責めてるけど、拙者は、言葉を表現の要と考えているので、つまりこの言葉のやり取りこそ、面白さの要と思います!よく見てみりゃ、このスチュアート君、かの「パイレーツ・オブ・カリビアン」の脚本もやってましたね・・・、今後も大いに楽しみです。この脚本の良さも、翻訳が戸田奈津子さんであるお陰様というやつで、彼女は、きっとこの手の映画が、特に好きなような気がするくらい、、映画の字幕台詞は決まってました!!久々に機知に富んだ会話ってモノを聞いた気がします。
 あらまあ、なんだか、映画界は今や、オーストラリア出身こそ才能豊サン状態ですねえ〜!

 マックス(ジェイミ−・フォックス)は、ベンツでプレミアな送迎サービスの会社を作るのが夢とし、タクシー運転手を12年もやっている。ある日、検事アニ−(ジャダ・ピンケット・スミス)を乗せた。道のりの時間を賭けにし、ちょっと心弾む会話をするふたり・・・。やがて、アニ−を降ろし、代わりに乗せたのは、ヴィンセント(トム・クルーズ)。彼は一晩の運転手を、多額のチップで依頼する。
 そうして、路地で車を止めて待っていると、突然、男がタクシーの上に落ちて来た・・・ビンセントの台詞は「俺が殺したんじゃ無い。銃が殺したのさ。」彼は殺し屋・・・絶句するマックス。しかし、今や行動を選べる立場ではなかった。次々と仕事相手のところ(つまり殺す相手)へと車を走らせながらも、マックスとヴィンセントは、世の中の、人の命に付いて会話する。・・・・・「ルワンダを知ってるか?」「アフリカだ」「ルワンダで、1日に何人殺されたか知ってるか?広島、長崎以来の10万人だ。その間、お前は何をした?まばたきさえしたか?」「・・・。」・・・・・その一方で、ヴィンセントにマックスはタクシー会社の上司とのトラブルから助けられる。その対応ぶりや、徹底的な仕事の進め方から、マックスも自分を振り返ると共に学びはじめる。
 しかし、一つの小さな綻びは、次第に広がって行く。初めの殺しの調査に疑問を抱いた刑事ファニング(マーク・ラファロ)は、ある麻薬王の検察に対する口封じであると言う、殺しの関連に気が付く。捜査は一気に、軌道にのって行く。
 一方、追い詰められる様に見えたヴィンセントだが、冷静に計画を練り直して行き、平行して、何事か考え始めたマックス・・そんな二人の前を、悠然とコヨーテが横切って行く・・・・遂にマックスは意を決し、「お前には、人間としての何かが完全に欠けている」といい、車のスピードをあげて行く。

 トム・クルーズ扮するヴィンセントは、シルバーの髪に無精髭、完璧なスーツと殊更カッコイイ!だいたい、笑わないトム・クルーズなんて初めて見たしィ〜〜〜、またこれ渋いんだワ〜〜〜。冷徹な殺し屋かと思えば、マックスとの会話には、その不幸に育った環境を、サバイバルして来た事とが伺えるし、殺し屋という、現実的では無い設定以外では、特別な人間では無く、ある種の感覚を麻痺させてしまった代表的スタイルの人間の種だとも。そして、その対極の全てを、地道ながらにも、善良に生きる多くの小市民の代表として、マックスが表していると思います。
 殺し屋という悪役が、果たして、本当に、主役になり得るのかどうか疑問だったし、主役にしたら、何か映像にしてまで伝えたいものがあるのかどうかも、すごく疑問だったけど、こりゃ〜見事に悪役にて主役のサプライズ映画、遂に登場!ってわけです。
 で、悪役の主役の運命は如何に?
 当然、内緒!気になるでしょ〜〜?
 このスリリングは、絶対見て感じなきゃ!!

2004年11月

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