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Chissarossa の I LOVE CINEMA 16

正しいミーハー映画になった古典物語「TROY」

 監督・プロデューサーが「アウトブレイク」やら、「Uボート」の、常に芸術性と商業性を両立させるウォルフガング・ペーターゼン。お話の元は、古来有名なる物語随一、ホメロスの『イリアス』より、誰もが知る”トロイの木馬”を中心としたところ。本や歴史に興味がなくっても、”トロイの木馬”だけは御存知ってぐらいだもんね。パソコンネット上の悪い虫にも「トロイの木馬」って命名するぐらい有名だしね。主演が、またこれ当代随一のハンサムの代名詞俳優、ブラピことブラッド・ピットに、「指輪物語 3部作」で華々しいデビューを飾り、その甘い、端正なマスクで、世界中の女性を虜にしているオーランド・ブルーム・・・大掛かりな映画には絶対必要!と、思わせるほど大物俳優ピーター・オトゥ−ル。
 はあ、この時点で売れない映画が出来るわけが無い、面白い映画が出来ないわけが無い・・・とは思います。

 ・・・が、しかし。今までこのホメロスの「イリアス」や「オデッセイア」が映画になった事があるかな???ないよねぇ・・・何かチョコッとだけ触れたようなのはあったけど、売れる映画になんかとてもなってないはずです。

 なんで???だって、今どきのSFX技術無くしてこの映画を完成させようとしたら、10年単位でモノを考える程気が長くて、恐ろしく容量の大きいイマジネーションを持っていて、綿密で徹底的に細かなところまでこだわる監督なんて、デビッド・リーン位しか思い付かないなあ・・・でも、もう星の国の住人になられちゃいました。

 そうなんです。この3000年も昔の時代の背景や、人々の生活、大戦争を描き出す事は、実写のみに頼っていると20年くらいかかってしまいそうです。(何度も出て来ますが「指輪物語」をピーター・ジャクソンは10年もかけました)第一、それだけの費用を、世界中の誰もカヴァ−する事は出来ないでしょうし、1000艘の船団や、何千人のエキストラを用意する等はもはや空想でしかありませんから。従って、この手の映像におけるCG、SFX分野の革新的技術や映像効果は「指輪物語」で本当に飛躍的に進歩したわけです・・・ピータ−・ジャクソンチーム様さまですわね。

 ウォルフガング・ペーターゼン監督は、ト−ルキンの「指輪物語」の関連作品である「ネバー・エンディング・ストーリー」(「果てしない物語」)を監督してるんですが、これがまた技術が足りなかったせいで、とても残念な結果になっておりましたから(・・・とはいっても84年当時はそれはそれで画期的ではあった)、「指輪物語」で限り無く完璧!状態にされちゃって、彼にとってみれば、密かに”リベンジ!”なのかもしれないと拙者は思いました。

 およそ3500年前の古代ギリシャ。スパルタ王メネラオス(ブレンダン・グリーソン)とエーゲ海一の戦士にして勇者と言われるトロイの王子ヘクトル(エリック・バナ)が長年の確執に終止符を打ち祝いの宴を催していた。同行していたトロイの2番目の美しき恋多き王子パリス(オーランド・ブルーム)は、絶世の美女と謳われたヘレン(ダイアン・クルーガ−)を愛してしまった・・・決して許されないのに。ヘレンは16歳でメレラオスの妻になっていたのだ。彼女を愛する事は国と民を売る事に等しい・・・それでも、パリスは若さ故にヘレンを奪い去ってしまう。
 妻を奪われたメネラオスは、名誉挽回のため兄であるギリシャ王アガメムノン(ブライアン・コックス)に助勢を頼み、アガメムノンはギリシャ統一の目の上のたんこぶを取り去るべく絶好の機会を得、4万もの兵を進軍させる。大戦争の始まりだ。
 トロイは世の中の最強の城塞都市として知られている。この戦いの鍵を握るのはギリシャ軍最強の戦士、人を殺すために生まれて来たと言われるアキレス(ブラッド・ピット)であった。アキレスは決してアガメムノンを尊敬出来なかったが、盟友であるオデッセウス(ショーン・ビーン)に説得され、女神である母テティスの予言を受け、歴史に不滅の名を残すためトロイへと向かう。
  いきなりアポロ神殿を奪うアキレス。巫女であるヘクトル、パリスの従妹ブリセウス(ローズ・バーン)が兵士によって連れ去られてしまう。
 パリスは自分の短慮な行動の結果が招いた戦争を目の当たりにし、自分がメネラオスと一騎討ちをする事で戦争を回避しようと考える。・・・が、ヘクトルと違い戦士としての教育も受けず王子としての自覚も薄いパリスは最後の剣を捨て逃げてしまった・・・哀しく、情けなくも、弟を守るためにヘクトルは遂にメラネオスを殺してしまう。
 もはやこの戦争を回避するのは無理、怒りに任せ両軍は激しい戦闘に入った・・・。

 規模も内容も申し分ない映画で、古代の戦争シーンは、日本においても源義経の戦闘シーンでも御存知の方も多いと思ますが、『やあやあ、我こそは〜〜〜』と現代の我々からすると辛気くさい位緩やかにてスローなものなのですが、そこのところも実に上手くカットの編集があり退屈する事無く進みます。
 今回の大ヒットは、売れる映画に出演でお膳立てが完璧とは言え、役者の力量をハッキリ観られるという事です!ミッケものはヘクトル役をゲットしたエリック・バナ。この人が主役か?と錯覚するくらいです。映画凝り凝りボーイのブラピが、自ら見つけて引っ張って来たそうで、「ハルク」の主人公ブルース・バナ−役、コメディアン出身のお方です。とってもステキ〜〜〜!とっても上手い役者です。
 その他にも特筆すべきは、ブラピを筆頭に、若手?男性出演者は皆、物凄い筋トレなさっているという事です。ちょっと並みな事態ではありません・・・砂漠の丘をブラピは、あの重い武具を持って駆け上がって行くんです!砂地をですよ〜〜〜ひや〜〜〜すごいわ。本人も「5ヶ月に渡ってきついトレーニングをしたけれど、もう二度と無理だ」とか。「指輪物語3」でオーランドが痩せこけてたと思ったのは、筋トレし過ぎて体脂肪ゼロ状態になっていたのねえ・・・という塩梅です。
 それから、お年の方々も役者の本随を見るようで、野外の撮影、音声は別撮りとは分っていても、迫力ジンジンに伝わって来る、まさに朗々とした声が響き渡り、素晴らしいですし、トロイ王プリアモスのピーター・オトゥ−ルが、ブラピに対峙して、息子を失った哀しみを最高の品位を持って語るシーンは圧巻です。
 トロイの木馬はメージャーなお話とは言え、ギリシア古典なんて堅苦しいイメージのものを、よくぞここまでミーハーな映画にしてくれたものです!・・・物語に興味がなくとも、ハッキリいって、全てが程よく揃っているので、ブラピを頭付きで観るだけでも十分。ああ、これぞ正しいミーハー映画かも〜〜〜〜

2004年6月

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