私の本箱 12
相澤せいこ
寒くなってきましたね!お天気が良くても日陰はひんやりですし、夜空の空気が澄んできたように思います。(今月は火星が良く見えてきれいですね。)
そんな風に感じ始めた日に本屋さんで出会いました。『世界のホットドリンク』(プチグラパブリッシング発行)。眺めているだけでなんだかほかほかしてきます。ヨーロッパからアジア、南アメリカまで、各地のカフェで、ご家庭で、和みのひとときに欠かせないホットドリンクがレシピと共にぎっしり紹介されています。
コーヒー系で一番多いのはアルコール入り。ご当地名物のお酒を少し入れて…ワイン(!)、ウォッカ、リキュール…ありとあらゆるお酒が入っちゃう(笑)。これだけ美味しそうな写真を見てしまうと、夜な夜な試してみたくなってしまいます。
お茶系もチベットのバター茶からロシアンティー、韓国の柚子茶…サモワールがただ紅茶を飲むためではなく、お部屋全体を温める暖房機を兼ねた冬の必需品だということを初めて知りました。(自ら沸くヤカン、という意味なのだそうです。)
温かい飲み物はゆっくりいただくものだから、火加減見たり一生懸命かき混ぜたりとひと手間かかっていることを思いやったり、体が温まることでほんわかと浮かんでくる幸せをかみしめる“余裕”が生まれます。友達と一緒に、家族と、ひとりきりでも。
ホットドリンクの本の中に出てきた言葉がきっかけで、本棚から2冊探して読みました。
「12月13日は聖ルシアの日。」「メキシコのクリスマス、ピニャータ割り。」
聖ルシアの日は『泣かないで、くまくん』(徳間書店)の中にスウェーデンの楽しいお祭りとして出てきます。この本、タイトルがちょっとおセンチで、泣かされるのが嫌いな私としてはぐっとくるのですが、お話はとても好きです。秋の終わりに公園で子供とはぐれてしまったぬいぐるみのくまくんが、同じような境遇のおもちゃ達が共同生活している家に拾われます。暖かくなって公園の砂場に子供達が戻ってくるまで、くまくんはここに居候する事にするのですが…仲良しだった子ども達とのお別れを、ゆっくりと受け入れていくくまくん。仲間との暮らしの中で少しずつ…説教じみた場面はひとつもありません。とてもせつない気持ちになりますが、悲しいのとはちょっと違う。誰も悪者にならないし、恨みもない。この本を読むと、度重なる引越しで手放してしまった“お気に入り”さん達をたくさん思い出します。ごめんねという思いと懐かしい気持ちとで。映画『トイストーリー2』を見てもこういう気持ちにはなれませんね(好きですが)。
ちなみに「ルシアのお祭り」とは、女神ルシアを称えて選ばれたルシア役の女の子が白いドレスを着てろうそくの冠をかぶるのだそうです(ちょっと怖そうな…)。スウェーデンのご家庭ではこの日、ルシアの格好の女の子がコーヒーとサフラン入りのパンを両親のベッドサイドへ運ぶ習わしがあるとか。
メキシコのクリスマス行事・ピニャータ割り。お菓子入り&派手なデコレーションのハリボテの動物を吊るし、目隠しして棒を持って順番に…スイカ割りみたいにして、出てきた中身を子ども達で分け合うそうです。このハリボテの「芯」になる、ひび割れた壺が主人公のお話が『クリスマスのつぼ』(ポプラ社)。
窯から出てきたふたつの壺。でも一方にはひびが。売り物にならないと捨て置かれます。もう片方がきれいに彩色されて市場へ。ひび入りの壺くんは嘆きますが、子供が「ピニャータの壺にぴったり!と言って持ち上げてくれます。「わーい!僕も役に立つんだ!でもピニャータって?」
準備の間のワクワク、そして子ども達の歓声…イベントは終わり、壺こなごなになってゴミ捨て場へ運ばれます。また悲しい気持ちの壺くんの元へ、市場へ行ったもうひとつの壺がやっぱり粉々になってやってくるのです。「僕たち、おんなじように生まれて、おんなじように終わったんだね」「そうだよ」「それで、めいめい役に立ったんだね」「そうだよ、だれだってみんなそうなんだ」ゴミの山は、いっせいに幸せなため息をつきました。誰にもみんな、それぞれに値打ちがあることがわかってうれしかったのです…(本文より)清水真砂子さんの訳は優しい言葉を使いながら、とても大切なことを伝えてくれます。読み聞かせも楽しかったな。素敵な絵本です。
冬は大好きです。でも、この季節の変わり目にうまく乗れないと風邪をひくことに。心も体も温かくして、上手にシフトチェンジしたいと思います。
2005年11月