Cantabile！
二ノ宮知子『のだめカンタービレ』

　恥ずかしながら、38年間私は大きな誤解をしておりました。オーケストラでも、学校のブラスバンドでも、必ず「指揮者」がいますよね。演奏者はみんな楽譜を持っていて、それを忠実に弾いていったらそれで曲はできあがる。大勢でテンポが崩れて合わなくなったらいけないから、メトロノーム代わりにいるのが指揮者―ずっとそう思っていたんです。

　よーく考えればそんなわけなくて。単なるメトロノームだったら、バーンスタインとか、カラヤンとか、オザワとか、世界に名だたる指揮者なんて存在しなくなりますものね。同じ曲を聴き比べたこともないし、大体違いがわかるほどたくさん聞き込んでもいないけれど、今ならよーくわかります。『のだめカンタービレ』を読んでいるから！

　『のだめカンタービレ』、娘と今はまってます。結構売れ筋だから、ご存知の方も多いのではないでしょうか。作者は二ノ宮知子。読み始めて、表紙カバーの折り返しを見てびっくりしました。大昔、バブル全盛のころに読んだことのあった『トレンドの女王ミホ』を書いていた人だー！あまり好きじゃなかったな・・・絵の感じも変わって、中身のある、それでいて笑いのツボもしっかり押さえているような作品を書く人になっていてよかった。

　才能と環境に恵まれて、ひたすら音楽の道を突き進んで指揮者を目指す千秋真一君と、天才肌のピアノの腕を持ちながら、それを磨く機会に恵まれずに生きてきた天衣無縫の変人・野田恵（通称：のだめ）、そしてこの二人を主軸に、音楽に…演奏することにとりつかれた人々の青春物語です。現在千秋＆のだめは紆余曲折の末フランス留学を果たし、舞台は世界へ。

　でも考えてみると、不思議です。お話の中で「すばらしい演奏」がいく度も描かれているのですが、漫画なので本当に耳で聞き惚れているわけではない。なのに、読んですばらしい演奏を聴いた気になっている。…どんな曲なのか聴いてみたくなっております。次のリストはいままでのお話の中で登場した曲です。実はBGMで聴いた事はあってもタイトルを知らなくてわからないものも多いのではないかと思います。『クラシック　イン』でも定期購読してお勉強すべき!?

2005年2月